SSS6




君は明日も生きていると思っていた

ダメージ蓄積。

遺して逝くことへの静謐な満足感。

先輩の様子がいつもと少し違って見えるのは、多分僕の願望か何かが鈍くなってきた知覚に干渉しているんだと思っていた。

語らない人。

愛を囁かない僕。

最期の瞬間まで僕より里が優先だった人の、最後の全て。

僕たちは不幸にもお互いの状態に気づいていなかった。

なのにこの一瞬が重なるために生きてきた。

刻々と迫るタイムリミット。

微笑。

愛が先だった僕と。

死が先だった先輩。




* * * * *



無題

任務後に先輩の部屋に上がりこみ、愛の営みに励んでいる最中。

「ねぇ」

下になっている先輩が、ちょっと首を傾げて僕を見上げてきた。

「何だか今日も、長くない?」

「……な、長い…ですか?」

確かに、カカシ班の隊長になって、ナルトの修行を先輩と一緒にみるようになってから日が経つから、任務ですれ違って数ヶ月も会えなかったことが珍しくない頃と比べれば、僕ががっつくことは少なくなったかもしれない。

正規部隊に配属されてから随分と穏やかになった先輩は、昔の自分を棚にあげて、僕のことをたまに「餓えた獣みたい」と表現していたけど、実際先輩に餓えていた僕は、たまに会えた時は嬉しくて感情のままに何度も求めて抱いたりしていた。

長い、か…。

ようやく、ゆっくり先輩を味わえるようになったんだけど…。

「こういうの、や、ですか?」

先輩、激しい方が好きなんだろうか。

「違う。そうじゃなくて…」

僕のゆっくりした動きに合わせて、肌をすりよせてきていた先輩は、ふいに僕の頭をくしゃくしゃにしてにこっと笑った。

「すまん。変な気使わせて。テンゾウ疲れてるのかなーとか、それか俺のしまりがイマイチなのかなー意識的に締めた方がいいのかなーって、ついついいろんなこと考えてな」

「……」

昔の先輩は、口が生意気で、下のクチも生意気なぐらい攻め攻めで狭かったけど、少年っぽく思考が潔癖で、羞恥心も半端なかった。下ネタにも耐性がなくて、僕が少しでも失言したら、

「な、なんてこと言うのよ、お前! もうお前とはしない!」

なんて手に負えないぐらいに拗ねて、僕に謝らせて、キーキーかわいく怒ったりしたものだけど。

「実はさー。この間、ちょっとケツ穴のメンテナンスに行って来てな」

僕のを咥え込んだまんまで、おっさんになった先輩はあけすけだ。

「え。もしかして、どこか痛かったんですか」

「いや、違う。ちょっとむず痒くって。だから、ま、ついでにな」

「ついで、ですか……」

こんな発想は呆れられるかもしれないが。

「……あの、先輩。僕以外の男に見せたんですか」

治療だから、卑猥な意味なんかないのはわかっているが、白い診療台の上で先輩がとった痴態や何かを想像すると心穏やかではない。

そんな僕の気も知らず、先輩はあっさりと否定した。

「ううん。女医だった」

「あ、そうですか。女医ですか……」

……。

でも、女の人も何か……。

「んでね。オカマさんだってばれちゃった」

「何でですか」

「あんたの彼氏ってこれぐらいの太さでしょって」

て。

「は!? はああああ!? 何ですか。何ですか、それ。何で、僕、見知らぬ女医に品評されにゃならんのですかぁっ!」

「あら。よくわかったわねって、俺、びっくりしちゃってさ」

「な、なに肯定してるんですか! って、その指の輪っかはやめてください!」

「だってその女医さんがこんな風に」

「も、いいです…」

「あ」

「……」

「テンゾウ。今、これぐらいに縮んじゃってるよ?」

「……だから、その輪っかは」

「俺より、テンゾウの方が通院の必要があったりして……」

僕は先輩の腰を抱えなおした。

「……必要、ないですっ」

無理はしないでね? 俺、できなくても大丈夫…とでもいうような視線が屈辱的だ。

狂う。狂う。

長いことこの人に狂っているけど、三十路間近になって初々しさを失った先輩の言動にはホントに調子を狂わされる。

「でも、好きだからね?」

できなくても、って意味か。

「こっちのセリフですっ」

ホント、狂う。




* * * * *



我知らず(テンカカ×女)

独占欲だなんて上等なものじゃない。

そもそもが精を吐き出すこととその前後に特別な感慨なんてない。

深入りしないようにというよりは、深入りさせないように気をつけて。だから、その女に対する気持ちは仲間というもの以上でもそれ以下でもなかったはずだ。

だが、『それ』が度重なると、さすがに意識の片隅に障る。

体を繋げたことのある男女というのは、ふとした瞬間に自覚も無く艶な雰囲気をかもし出すものだ。

あるいは自分もそうなのかと自戒の気持ちを抱きつつ、後輩の男の珍しく優しさのにじんだ表情を盗み見て内心で舌打ちをする。

何人目だ。これで。

「どうゆうつもりよ。お前」

偶然か必然か。だが、悟らせるような態度に出るには、それなりの理由があるんだろうが。

「……何のことでしょう」

「俺の口から全て聞きたい変態かよお前。……俺が寝た女寝た女、いちいち手をつけられると気に障るんだけど」

「そんな覚えはありませんけど」

面白くもなさそうな顔で否定する後輩を前にして、らしくもなく俺は感情的になった。

「じゃあ、俺の性癖を女に聞き出そうとするのやめてくんない?」

恐らく反駁しようと口を開きかけた後輩は、そのままの形で言葉も無く思考タイムに入りやがった。

据わっていた目がほんの少しだけ翳って鋭さが弱まる。

開いていた口が閉じる。

不自然な沈黙がさらに延長される。

……何だ、その間は。

苛々して腕を組んでいると、眉間に皺を寄せた後輩が急に「わかりました」と深刻な声で言い踵を返そうとした。

「待て待て。何が『わかった』んだ。お前」

「すみません」

到底すまないと思っているようには思えない太い声で言い捨てて後輩は逃げ、その後も微妙に避けられ、そのくせ意識されている気配を感じるために。

俺は女と駄目になった。

稀に感じる暗い瞳に見張られている気持ちになってしまい、迂闊な行動ができなくなった。

また俺が誰かを抱いて、それをまたあの後輩が果たして今まで通りに組み敷くのかどうか。

思わぬ人間と思わぬ緊張関係になったことを、俺は密かに笑う。

確かめるのも悪くは無いが。

俺はその答えを知ることを、今はまだ保留にしている。

* * * *

我慢してると溜まると思いますよカカシ先輩。




* * * * *



勘違い的に四月馬鹿

「先輩は、ああ見えて僕のことがすごく好きなんだよ。そもそもが初めての時、どちらから誘ったかも、もう覚えてないしね(爽やかな微笑)」

「……お前ね。エイプリルフールはとっくに終わってるよ」

* * * *

真実:はじまりはちょっぴり無理姦で、その後もストーク(忍び寄る)系のつきあいです☆




* * * * *



先輩まであと○センチ

聞いて僕のアップルミントさん。その後ろのラベンダーさんも聞いておくれよ。

僕…いつか、先輩より背が高くなったら、告白しようと決めてたんだ。

歳も実力もすべてが格下の男に組み敷かれるなんて、自尊心の高い先輩が嫌がるだろうって。

牛乳飲んで、腕も磨いて。

でも、テンカカの時期を過ぎてしまったよ。orz

* * * *

ヤマカカの時期を過ぎても状況は変わりそうもありませんが…。

そんなテンゾウ君にヒント。⇒『先輩の猫背』(誘ってる予感が千鳥並みにピチュピチュ!!!)




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