木遁の贄1




「ははっ。いい眺めですね。先輩」

「テッ、テンゾウ! いい加減これ外しなさいよ!」

里の誇る上忍で、元暗部。写輪眼をさらせば泣く子も黙ると言われるこの俺ことはたけカカシ(29)は、不本意ながら最近地面から3メートルぐらいの高さで、ミョーン!と間抜けに吊り上げられていることが多い。

犯人は現在この木ノ葉の里で唯一木遁忍術を扱える男、テンゾウ(年齢不詳)。

ヤツは頭上で喚いている俺を、ムカつくほど爽やかな顔で鑑賞している。

暗部時代は後輩だったテンゾウを、俺はかなりかわいがってやっていた。初任務で足がすくんで動けなかったテンゾウを庇って勇気づけたりなぐさめてやったのが俺なら、荒くれ者のしかも巨根で有名な先輩にカマ掘られそうになっているのを助けてやったのも俺だ。

新人暗部にありがちな、『任務で血を見てボク拒食症になりました!』状態でふらふらのテンゾウに粥を作ってやったのも俺だし、何を隠そう筆おろしもこの俺が…! って、そんな過去のことはどうでもいいか…しかも俺の方もかなり気持ち良かったなんて、あああ! そんなことは今全然関係ないし!

とにかく俺は数ある後輩の中でも特別にテンゾウには目をかけてやっていたし、あいつも「カカシ先輩。カカシ先輩」と言って偉大な先輩であるこの俺を慕っていたはずなのだ。

なのに! なのにこいつは、「ボクはもうカカシ先輩より強いかもしれませんよ」などとぬかして、恩を仇で返そうとしている!

何がどう間違ってこうなったのか、結果俺は木遁で縛られて青空の下をぐるぐるミョーン!だ。

しかもこのヒトの木遁って、角材が出てくるから痛いのよ……。緊縛にはイチジルシク向かないと思うんだけど、テンゾウはマゾの皮を被ったサドだから気にしている様子はない。誠実そうな外見で、薄ら笑いを浮かべている。

「くそっ! いい加減降ろせテンゾウ!」

先輩の威厳はどこへやら。うねうねとテンゾウの手先になって働く角材に額宛や上忍ベストを剥ぎ取られた俺は、後輩の頭上で情けなく喚いた。

ナルトの修行にかこつけて、こき使うだけこき使ってチャクラを削ろうと試みたのにまったく効いている様子はない。むしろ日々鍛えられて元気になってるんじゃないかと思うぐらいで、俺は作戦ミスを認めざるを得なかった。さすがに若いだけあって、食欲と性欲は別らしい……。

「ちょっと聞いてるの!? テンゾウッ!」

「今はテンゾウじゃなくてヤマトです」

ヒステリックな俺の抗議を『ヤマト』はさらりと受け流した。

くそぅ。名前が変わったからって、人格まで変えるな! つか、変わると思うなよ! テンゾウのくせに!

怒りで真っ赤になってキーキーと喚く俺を見て、テンゾウは「先輩のエロイ姿を公衆の目にさらすのは本意ではありませんから」とうそぶくと、ニヤリと笑って両手をパン!と組み合わせた。

「木遁四柱牢の術!」

「ヤダぁ! ヤダヤダヤダッ! もう本当にヤメテよテンゾー!」

じたばたと足掻いてみるが、四肢を角材に縛られて閉鎖空間に監禁されてしまった俺にはもう勝ち目がない。

見る者にカタブツで保守的な印象を与えるテンゾウは、実は木ノ葉で一番の罰当たり野郎だ。初代様の忍術で俺を辱めることにまったくと言っていいほど躊躇いがない。

「今日はもう少し太くしてみましょうか。そろそろ先輩も物足りなくなってきたでしょう」

細心のチャクラコントロールはさすがだけど、こんな破廉恥なことをするためだと思うと感心する気にもなれない。

「前にも言いましたが、痛くするのは趣味じゃないんです。ボクのが入っても大丈夫なぐらい、毎日解して徐々に拡張してあげますからね」

優しい笑顔で恩着せがましくテンゾウは言うけど、大きなお世話! 最近使ってなかったからどうだっていうの! 全然嬉しくない。俺はホントにヤだって言ってるのに!

そんな叫びもむなしく、毎日テンゾウの目の前で、俺は節つきのしなやかな枝に犯されている。

「あぁ…、ン……ヤダっ。こんなのヤダ…」

薄暗い木遁の牢の中で、ぐちゅぐちゅと俺の尻から卑猥な音が漏れる。ついでに男を感極まらせると密かに有名だった俺の喘ぎ声も盛大に漏れる。

「あ…、あっ、あっ…ヤッ、ヤダ……ぁあッ!アッ!」

余裕ありげに腕を組んで俺の様子をみつめていたテンゾウが、ぼんやりと瞳を細めて、ほんの少しだけ呼吸を乱した。

「あー…ッ、…テンゾー……」

「……」

ただ黙って静かに俺の様子を見ているけれど、ヤツは天性のエロ男なのか、木遁をコントロールする手にはぬかりがない。

俺の弱いトコロを葉で責めるだけでなく、びくびく跳ねる体を角材でぎゅっと締めたり、緩めたりするからたまらない。

ずるずると尻穴を犯す枝も俺の官能を絶妙に煽るから狂いそうになる。知らず俺の声に涙が混じり始めた。

「ふっ……あっ、あっ…ぁあンッ…あっ…」

とにかく気持ちよすぎた。

俺はぶるぶると震えながら、所在無く空中に吊らされている我が身を呪った。

抱きしめられたいのに、俺は手足を固定されて、何もつかむことができない。

不確かな足場が気持ち悪いだけじゃなくて、この体を抱いてくれる腕が体が欲しいのに。

テンゾウは俺のそんな様子をただ見ている。

平常時よりほんの少しだけ息を乱して、俺の痴態をながめている。

落ち着いて見えるけど、そんなテンゾウの腰が少し揺れているのを俺は目聡く視界の端に捕らえた。

「アッ、アッ、アアッ…テンゾー……アー…ン…ッ」

名前を呼んでも、テンゾウは何も答えてくれない。

こんなことするほど俺が好きなら、我慢してないでつっこんじゃえばいいのに。

何でしてくれないんだろう。何で抱きしめてくれないんだろう。テンゾウ。

ぼうっとする頭でそんなことを考えていたら、重大な事実に気がついた。

そういえば、俺、テンゾウに「好きだ」なんて言われたことないよ!

「アあんッ、くそっ! テンゾウのバカ、バカ! 大嫌いだッ! うッ…!」

今更ながら暴れても、角材が食い込んで痛いだけだった。「暴れると怪我しますよ」と脅すだけあって、その辺テンゾウは結構シビアだ。

息も絶え絶えに犯されていても時々こうして元気になる俺を、ドSのテンゾウはいつも楽しそうに笑って見ている。しかし今日は虫の居所が悪かったのか、暗い牢屋に似合いすぎるようなひどく陰険な目をして低い声で恫喝してきた。

「……そんなこと、わざわざ言われなくてもわかってますよ。黙らないと、その口塞ぎますよ」

その声があまりに冷たかったから、本当にひどい目に遭わされるかと思って俺は震えた。

上忍なのに情けないと言うなかれ。敵忍にとっつかまっての拷問なら俺も腹をくくるが、ここは里内でしかも相手はテンゾウだ。どんな立派な忍びだって普通は痛いのはイヤがるもんだ。びびってしまうのも致し方ない。

『恐怖で支配するのも嫌いじゃない』。そういえばナルトがそんな脅され方をしたとかで『超びびったってばよ!』なんて言ってたっけ。

俺はテンゾウにとって、恐怖で支配する、そんな対象だっていうの? ナルトと同列なんだ……。ひどい。ひどい。

でもそんな心の葛藤も触手責めにあっている俺の体にはあまり関係がなかったようだ。

ここ何日かですっかり後ろへの刺激に味をしめた俺の体は、もっと気持ちよくなりたいといわんばかりに触れられていない前も浅ましくおっ勃てはじめた。

ああ、とうとうはたけカカシ淫乱伝説復活か。でも木に擦られてトコロテンなんて、もしかしなくても俺、カッコ悪……。

くすん、と泣きたくなる思いで悦楽に身を任せていたら、ずっと黙って見ていたテンゾウがすっと腕を伸ばしてきた。

「ごめん。先輩。それだけは、ダメ」




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